大判例

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名古屋地方裁判所 昭和46年(ワ)1214号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕逸失利益

原告は、本件事故当時三四才、昭和二八年に結婚して、夫と二人の子供(小学校一年生と幼稚園児)を擁する家庭の主婦であつた。傍ら、原告は夫と子供の留守の時間に月に一五日くらい生命保険の外交員をして、平均一ケ月金一万円程度の収入を得ていた。

ところで、家庭の主婦についていわゆる逸失利益を認め得るか否かについては、これを積極に解するのが相当である。蓋し、一般に主婦はいわゆる家事労働に従事しているのであるが、この家事労働には、家族全員のためにする炊事、洗濯、掃除、身の廻りの世話、買出し、家計の調整、親戚知人との交際、近所づき合い、訪客の応接、子供のための保育、教育等多種多様のものが含まれており、これらの労働が相応の能力と勤労の意欲を必要とするものであることは言うまでもない。そして、その労働内容の多くのものは、円滑な家庭生活、ひいては正常な社会生活関係が維持されるために必要不可欠のものであり、且つ現今の社会において家政婦、お手伝い、家庭教師、育児施設の従業員等対価を得てこれを職業とする者の労働と多くは異らないのであつて、事故のために主婦がこの労働に従事することができないことになれば、その労働は、通常の場合これ等職業人の労働によつて代替さるべきものと考えて差支えなく、それに伴つて相応の支出を余儀なくされることは明らかであるから、その意味において収益性を有するというに妨げないからである。

而して、その労働をいくらに評価するかについては、前示のとおり家事労働の内容が頗る多種多様であること、それが多くは女性の職業の対象とされているものであること、他面、家事労働には時間的限界がないこと、職業人としての労働には労働契約に基づく拘束性が伴い家事労働に較べて一般に労働の密度が濃いこと、家事労働の内容には社会的評価に親しまない趣味、嗜好的な面もないではないこと等を考え合わせると、全産業女性平均給与額の八〇%程度のものと評価するのが相当である。

そうすると、本件事故が発生した昭和四四年の全産業女性一ケ月平均給与額は金二万九、二〇〇円(第二一回日本統計年鑑二七五、二七六表)であるから、その八〇%は金二万三、三六〇円となる。

託児代

原告は、昭和四四年一二月二七日から昭和四五年四月一八日までの託児代として金三万九、二〇〇円を請求しているが、託児は自ら育児することができないことによる出費で、本来育児は主婦の家事労働に含まれているものであり、前示のとおり主婦としての家事労働能力の当該事件に基づく喪失分(育児ができないということはその一部に含まれる。)に対する損害がてん補されれば、それによつて託児のための損害もてん補されるべき筋合のものであるから、失当として棄却すべきである。 (藤井俊彦)

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